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２００７年度句集 |
老犬も噛みにくそうに年の豆
病室に笑顔がこぼれ春こぼれ
お馴染みのシロに無視され梅仰ぐ
飛び立ちてまた戻りくる河原鶸
舞い立ちて金粉散らす河原鶸
鴨川の亀の飛び石水温む
鶯や雨脚次第に強くなり
束ねられ花屋で花咲く桜かな
騎馬隊の蹄鉄響く桜道
初蝶や追分あたりで見失ふ
避難場所枝垂れ桜の下と決め
空は海泳ぐが如く翔ぶつばめ
ペンギンは蝶を追ひ子は毬を追ふ
緑蔭に石のテーブル石の椅子
思い出す姉と竹の子錦小路
柏餅二人なのだが三つ買ふ
草刈りのいきれのなかを道急ぐ
目が並ぶ近江の子鮎買ひにけり
夏空や飛行雲飛び出す比叡山
五月雨や雨女ばかりのバス旅行
裏山にしじまを残しほととぎす
退院の決まりし友や日日草
塀越しの紫陽花撫でて通りけり
客は皆扇ぎて扇子品定め
安心感姉の不揃ひ茄子胡瓜
比叡山間近な庭で鮎貰ふ
初鮎にうっすらと振る化粧塩
厨にも朝日眩しく梅雨あける
迷い子と室町歩む宵々山
祇園町くらがり通の鬼ヤンマ
もうちょっとかじってみたき西瓜かな
水遊び悲鳴まじりの子等の声
蝉しぐれ五巻にすすむゲド戦記
かなかなや子が東京へ帰る朝
秋栄てふ梨の届きし日曜日
雨上がり広場は蜻蛉の独り占め
エレベーター地上階にて待つトンボ
コンビニの牛乳売り場にちちろ鳴く
こぼれ萩箒片手に立つ宮司
何よりも湯上がりに知る遅き秋
萩神社帰りに初めて手をつなぐ
金木犀きのう吠えられ今日もまた
満月が見える我が家の我の席
曲がり角曲がる前から金木犀
友達のその友もぎしすだちかな
赤まんま見つけし夫は手で招く
なにげなく覗く交番花すすき
すれちがふ犬の爪音初時雨
パソコンの角に一匹冬の蠅
人形も驚く夫のおお嚔
櫨紅葉盆栽なれどご用心
伊勢海老の話しはつきぬ十二月
叡山の水のコーヒー秋深し
引き返し木の実の名前問ひにけり
初夢はナイルの畑の京野菜
氏神の箒目正し淑気かな
人形にかたちだけなるお年玉
買初めの靴履いてみる部屋のなか
鬼の豆おおかた酒につまみけり
あっけなく豆撒済ます老い二人
結露拭く窓より遠く雪景色
思ひ出す昔買ひたり今川焼